ハンドオフ
ハンドオフは、ある エージェント が別の エージェント にタスクを委譲できるようにします。これは、異なる エージェント がそれぞれ異なる分野を専門としているシナリオで特に有用です。たとえば、カスタマーサポート アプリでは、注文状況、返金、FAQ などのタスクをそれぞれ専門的に処理する エージェント がいるかもしれません。
ハンドオフは LLM に対してツールとして表現されます。たとえば、Refund Agent という エージェント へのハンドオフがある場合、ツール名は transfer_to_refund_agent になります。
ハンドオフの作成
すべての エージェント には handoffs パラメーターがあり、Agent を直接渡すか、ハンドオフをカスタマイズする Handoff オブジェクトを渡すことができます。
Agents SDK が提供する handoff() 関数を使ってハンドオフを作成できます。この関数では、ハンドオフ先の エージェント に加え、任意のオーバーライドや入力フィルターを指定できます。
基本的な使い方
シンプルなハンドオフの作成方法は次のとおりです。
from agents import Agent, handoff
billing_agent = Agent(name="Billing agent")
refund_agent = Agent(name="Refund agent")
# (1)!
triage_agent = Agent(name="Triage agent", handoffs=[billing_agent, handoff(refund_agent)])
billing_agentのように エージェント を直接使うことも、handoff()関数を使うこともできます。
handoff() 関数によるハンドオフのカスタマイズ
handoff() 関数では、さまざまなカスタマイズができます。
agent: ハンドオフ先の エージェント です。tool_name_override: 既定ではHandoff.default_tool_name()関数が使用され、transfer_to_<agent_name>に解決されます。これを上書きできます。tool_description_override:Handoff.default_tool_description()による既定のツール説明を上書きします。on_handoff: ハンドオフが呼び出されたときに実行されるコールバック関数。ハンドオフが呼び出されると分かった時点でデータ取得を開始するなどに便利です。この関数は エージェント のコンテキストを受け取り、任意で LLM が生成した入力も受け取れます。入力データはinput_typeパラメーターで制御します。input_type: ハンドオフが想定する入力の型(任意)。input_filter: 次の エージェント が受け取る入力をフィルタリングします。詳細は下記を参照してください。is_enabled: ハンドオフを有効にするかどうか。真偽値、または真偽値を返す関数を指定でき、実行時に動的に有効・無効を切り替えられます。
from agents import Agent, handoff, RunContextWrapper
def on_handoff(ctx: RunContextWrapper[None]):
print("Handoff called")
agent = Agent(name="My agent")
handoff_obj = handoff(
agent=agent,
on_handoff=on_handoff,
tool_name_override="custom_handoff_tool",
tool_description_override="Custom description",
)
ハンドオフの入力
状況によっては、ハンドオフを呼び出す際に LLM に一部のデータを提供してほしい場合があります。たとえば、「エスカレーション エージェント」へのハンドオフを想像してください。ログのために理由を提供させたい、ということがあるかもしれません。
from pydantic import BaseModel
from agents import Agent, handoff, RunContextWrapper
class EscalationData(BaseModel):
reason: str
async def on_handoff(ctx: RunContextWrapper[None], input_data: EscalationData):
print(f"Escalation agent called with reason: {input_data.reason}")
agent = Agent(name="Escalation agent")
handoff_obj = handoff(
agent=agent,
on_handoff=on_handoff,
input_type=EscalationData,
)
入力フィルター
ハンドオフが起きると、新しい エージェント が会話を引き継ぎ、過去の会話履歴全体を参照できるようになります。これを変更したい場合は、input_filter を設定できます。入力フィルターは、既存の入力を HandoffInputData 経由で受け取り、新しい HandoffInputData を返す関数です。
いくつかの一般的なパターン(たとえば履歴からすべてのツール呼び出しを除去するなど)は、agents.extensions.handoff_filters に実装済みです。
from agents import Agent, handoff
from agents.extensions import handoff_filters
agent = Agent(name="FAQ agent")
handoff_obj = handoff(
agent=agent,
input_filter=handoff_filters.remove_all_tools, # (1)!
)
- これは、
FAQ agentが呼び出されたときに履歴から自動的にすべてのツールを削除します。
推奨プロンプト
LLM がハンドオフを正しく理解できるようにするため、エージェント にハンドオフに関する情報を含めることをお勧めします。agents.extensions.handoff_prompt.RECOMMENDED_PROMPT_PREFIX に推奨のプレフィックスがあり、または agents.extensions.handoff_prompt.prompt_with_handoff_instructions を呼び出して、推奨データをプロンプトに自動的に追加できます。